歯科メンテナンスは果たして保険診療であるべきなのか?【偶然見えてきた歯科医療における混乱ぶり①】
最近、当院に患者さんとして通われ始めた女性の歯科医さんから、こんな指摘をされたんです。
「3ヶ月に1回は、歯科で定期的にメンテナンスしなきゃダメよ」
う〜ん。
虫歯治療が終わっても予防的に半年に一回くらいは、定期メンテナンスに受診した方が良いとは頭では分かっているんだけど…。
歯医者さんって、ぶっちゃけ恐いですもんね(笑)。
それと。
どうやら、「3ヶ月に1回のメンテナンス」には根拠があるのだそうです。
さらには。
調べていくうちに、変わりゆく歯科業界の現状についても偶然知ることとなったんです。
バイオフィルムってご存知でしたか?
実は、その女性患者さん(歯科医さん)から初めて「バイオフィルム」なる言葉の存在を教えて頂いたんですね。
皆さんはご存知でしたか?
いろいろ調べてみたのですが、こちらのサイトがいちばん信憑性が高いものと感じましたので、引用させて頂きます。
バイオフィルム(Biofilm)も、歯周病菌などの微生物やその代謝物の集合体です。では「プラークとは何が違うの?」という話になりますが、結論から言ってしまえば、バイオフィルムとプラークは同じものです。
そもそも、20年以上前はほとんどの歯科関係者が歯垢のことを「プラーク」と呼んでいました。しかし、10年ほど前からでしょうか。プラークの構造 がお風呂の排水溝やシンクの三角コーナーなどで見られるヌルヌルと同じ構造であることが、研究によって分かってきました。ここで、このヌルヌルを指す言葉 として登場してきたのが「バイオフィルム」です。以降、バイオフィルムという言葉が環境や医科といったさまざまな領域で扱われるようになり、ここから一部 の歯科関係者がプラークをバイオフィルムと呼び始めたことで広がっていきました。
そういった経緯もあり、ベテランの先生方が歯垢をプラークと呼び、若い先生方はバイオフィルムと呼ぶ傾向があるように思います。呼び方が異なるのは 全く問題ありませんが、歯科関係のブログやWebサイトには「歯磨きで落とせるのがプラーク(歯垢)で、落とせないのがバイオフィルム」「プラークが成熟 してできたものがバイオフィルム」といった間違った記載も散見されます。これらは正しくありません。
これらを取り除くには、患者さんご自身による正しいブラッシングが欠かせません。しかし、患者さんご自身ではどうしても取り除けない部位もでてきてしまいます。そのような部位は、歯科医院で適切に除去してもらうことをおすすめします。
要は、「歯垢」が「プラーク」になって、「プラーク」が「バイオフィルム」へと呼び名が変わっていったということなんですね。
ただ、この「バイオフィルム」なる言葉の定義がバラバラなようなんですよ。
歯科医院によって見解はさまざま
いろいろな文献や、歯科医院ホームページを覗いてみたところ、プラークとバイオフィルムを別物と解釈しているケースが本当に多かったんですよね。
まさに先ほど引用させて頂いた説明に書いてあった通りでした。
そして、 歯磨きで落とせるのがプラーク(歯垢)であり、落とせないのがバイオフィルム。
だいたい、こんな感じ。
そして、プラークからバイオフィルムに成長してしまうまでの時間が、だいたい3ヶ月なんだそう。
これが、「3ヶ月に1回のメンテナンス」のひとつの根拠なのだそう。
結局のところ正解がわからない
一部歯科系サイトには、「細菌群がバイオフィルムを形成するまでに成長してしまうと、特殊なバリアーを張ってしまい、薬剤すら効かなくなる」と書いてありました。
そうなると、歯磨き粉によるブラッシングや洗口液を用いても、落とすことが困難になってしまうのだと。
もう、歯科医院による専門的な処置を施さないと駄目になるんですね。
でも、先ほど引用させて頂いたサイトには、バイオフィルムとはいってもあくまで歯垢にすぎないのでブラッシングをすれば落とせるとも書いてありましたけど…。
僕なりの見解
結局、諸説あるもので、どれが正解なのかは分かりませんでした。
なので、自分なりに推測してみようと思います。
バイオフィルムは歯垢(プラーク)の呼び方が変わっただけのもの。
だから、もちろん毎日の歯磨きで落とせるが、歯の隙間など、どうしてもブラッシンングの届かない所が出てきてしまう。
時間が経過して、歯垢から歯石へと変化してしまったら、歯磨きレベルでは落とせなくなり、歯石が虫歯菌や歯周病菌にとって絶好の住処になってしまうこと。
歯石の存在によって、虫歯菌のみならず歯周病菌の活動をも活性化させてしまうことになり、悪い循環へと繋がってしまう。
そのサイクルを断ち切るのに、ひとつは「3カ月」というスパンで定期メンテナンスに行くべきなのだと。
こんな感じでしょうか?
まとめ
結局、バイオフィルムなる新しい言葉の定義が今イチよく分かりませんでした(泣)。
諸説あって、どうやら専門的用語としては、まだ成熟していないのでしょうか?
ただ、日々のブラッシングだけでは、どうしても及ばない部分が出てきてしまうもの。
歯垢が歯石へと成長してしまうと、歯周病菌をはじめ雑菌の絶好の温床になってしまうこと。
だから、「3カ月に1回は歯科医院に定期メンテナンスに行くべきなのだ」ということなのでしょう。
ただ、ここでひとつ問題点が…。
現状の歯科治療においては、メンテナンスは「保険診療」の適用外なんだそうです。
簡単に言うと、現状の制度だと、病気になってからしか健康保険は使えないから。
そいうえば、歯科におけるメンテナンスという考え方は、ひと昔前までは存在していませんでしたよね。
でも、保険診療でのメンテナンスを謳っている歯科医院のHPも多く目にします。
今回、バイオフィルムについて調べていた結果、実はいちばん疑問に思ったことがコレなんです。
果たしてメンテナンスは自費診療になるのかどうか?
この件で、こちらのサイトが非常にわかりやすく書いてあり参考になりました。
「バイオフィルム」のみにとどまらず、「メンテナンス」という本来素晴らしい考え方についての解釈も歯科業界のあいだでは、まだ多少の混乱があるみたいですね。
そして、その混乱の原因が厚生労働省の「硬直化した見解」にあるのではと、個人的には考えてしまいます。
医療費節減のための本質的な打開策が待たれるところです。
2018.8.4