ちょっと乱暴なハーフの子が垣間みせた寂しげな表情【整体院託児所での日常】
10年以上も前の話です。
当時通われていた患者さんのお子さんで、あるハーフの6歳児に大変気に入られてしまった思い出について語らせてください。
日本人の母親と、イギリス人を父にもつ男の子。
とても美形の男の子だったのですが、どことなく寂し気だったのが印象として記憶に残っているのです。
当時勤めていた中野のカイロプラクティック院が、まだ珍しかった「託児システム」を業界に先駆けて導入。
患者さんたちの要望に応える形で試験的に始めた、このシステム。
当初予想を大きく超える大変な反響を頂いて、あふれかえる需要に対して、とても供給が追い付かない状況でした。
ベビーシッターさんの手が足りず、当時まだ駆け出しだった自分もエプロンを着て、よく託児を手伝ったものです。
多かったのが「時間外」の託児利用への対応。
そういった要望には、もちろん事前に了承を頂いた上で、男性の施術スタッフが託児を担当していたんです。
ちなみに。
これまで自分が預かった赤ちゃんの数は優に100人は超えるものと思います。
だから、おむつ替えも手慣れたものなんですよ(笑)。
ところで、先ほどのハーフの子に話は戻ります。
たしか、その子のお母さん、お仕事をされている方だったこともあってか、いらっしゃる日は決まって土曜日でした。
しかし、土曜日の夕方は、時間外の枠だったので、ほぼほぼ自分が毎回、託児担当とならざるを得なかったのです。
最初の頃は、すごくシャイでおとなしい子だったんですよ。
だけど、慣れてくると一転、積極的に絡んでくるように。
まあ、子どもらしくて可愛いんですけどね(笑)。
ただ、だんだん要求がエスカレートしだしてきて、大人を困らせるようなことも。
ちなみに本当は、僕の他にもう一人交代で担当していた先輩の男性スタッフがいたのですが…。
彼は、ある日、涙で目を赤くはらして、
「もう自分には、あの子は無理ですから…」
と、言ったのを最後に担当から外れてしまいました。
おいおい、毎回オレが担当かよ。
(※もちろん心の声です)
ちょっと乱暴な一面もあったのですが、何だか妙に僕に対して甘えてきているようにも感じてたんですね。
毎回、決まってやることは一緒。
前半の30分は、赤ちゃん用のおもちゃのマイクを使っての宇宙人の声マネ。
これが精神持ってかれるんですよ(笑)。
そして、後半の30分は赤ちゃん用のクッションボールを使ってのキャッチボール。
わざと明後日の方向に投げては、僕に取らせにいくのです。
これが体力持ってかれるんですよ(笑)。
もう一時間終わった頃には、クタクタとなります。
よっぽど本業の施術のほうが楽です。
でも、だんだんと情が移ってきたのも本音。
懐いてくれるのが、嬉しかったりもしたのです。
でも、ある日ふと考えたんですね。
小学校一年生の男の子が、毎回お母さんの整体にくっついて来るのは何故なんだろうと。
近所の友達と遊んでいるほうが、よっぽど楽しい年頃なはず。
お父さんとも、休日に遊ばないのかな?
なぜ?
ひょっとしたら地元の公立小でなく、インターナショナル・スクールに通っているから近所に友達がいないのかな?
まさか、学校でいじめられているから友達がいない?
過剰なまでに甘えてくる反面、どこか寂し気な表情も時折みせるのです。
結局、真相はわからず終い。
今でも、ふと、あの子は元気にやっているのだろうかと心配になったりする時があるのです。
おそらく、今は高校生くらいに成長しているはず。
きっと、今対面したら、こっちが緊張しちゃうんでしょうね(笑)。
2018.5.6