「焼きそばUFO 」をみるたびに思い出す、あの患者さん
これも、もう十年ほど前の話です。
ご夫婦で会社経営をされている女性の患者さんで、多忙の合間を縫って来院されていました。
さすがは元外資系企業社員。
頭脳明晰で、とてもサバサバした、歯切れのよい喋り口調が印象的な方でした。
生後数か月の赤ちゃんをおぶってラーメン屋に入った話だとか、中華系ファミレスチェーン店でよだれを流して食べたがる生後12か月の赤ちゃんに「ラーメンの汁かけご飯」を与えてしまった話など。
彼女の豪放磊落(ごうほうらいらく)さを語るエピソードは、数え切れません。
そんなある日。
いつものように上の子のお迎え時間に合わせて、夕方の早い時間帯に来院されたのですが、手に下げた買い物袋からは山のような「焼きそばUFO」が透けて見えました。
そして。
こちらから聞くまでもなく、彼女はこう切り出したのです。
「先生、焼きそばUFOって最近、リニューアルされて美味しくなったのよ!」
「麺がぜんぜん美味しくなってね。だから毎日食べてるの。先生も食べてみてよ!」
知らなかった。
この世に「ペヤングソース焼きそば」よりも美味しいカップ焼きそばが存在するなんて…。
さらには「ペヤングソース焼きそば」がローカル商品だったという事実も、このとき初めて知ったのです。
…ということは、この際どうでも良いことで。
彼女は乳飲み子を抱えているのに、UFOなんて果たして常食して良いものなんでしょうか?
まあ赤ちゃんもかなり大きめで元気だったし、神経質になり過ぎる方が良くないのかなと無理やり自分を納得させてしまったことを思い出します。
拝見した限りでは、とても裕福そうな印象でしたが、そういう方に限って却ってカップ麺のようなファストフードに惹かれてしまうものなんでしょうかね。
その後しばらくの間、私もUFOを食べ続けてしまったことをこの場でそっと告白させていただきます(笑)。
2018.3.17