人類は難産であるが故に男女の愛が深まったという話【人類の歴史②】
前回ブログ【人類の歴史①】からの続きとなります。
人類は難産と引き換えに、男女がより深く愛し合うようになった
難産⇒男女の愛??
いったいどういうこと?
順を追って説明していきましょう。
人類は二足歩行を成し得たことによって知能を大きく発達させた
「人間を人間たらしめる理由」とは?
この際、哲学的なことを抜きにして考えてみて下さい。
それは、他の動物と比較にならないくらいの高い知能を持ち合わせていることなのではないでしょうか?
我々人類の遠いご先祖様は、「四つ足のケモノ」だった時代から二本足で立ち上がり、両手を自由に使えるようになったことで、道具を使いこなし、知能を大きく発達させることに成功したのです。
その結果、脳の容量は大きく増し、頭蓋骨が大きくなるよう進化していったのですね。
アタマが大きくなったことで生じた問題
しかし、ここで大きな問題が生じたのです。
両手を自由に使えるよう二本足で立ちあがった結果、人間の骨盤はスムーズな歩行のために横長に小さく、その形を変えざるを得なくなったのです。
他の「四つ足のケモノ」たちとの決定的な違いは、「人間の骨盤は、幅広で丸く小さい骨盤へと進化した結果、狭い産道を持つこととなってしまったこと」。
すべては、スムーズな二足歩行を可能にするためだったのです。
骨盤の進化
・左から、テナガザル、チンパンジー、ゴリラ、人間の骨盤
・人間の骨盤は、直立二足歩行の獲得によって幅広になっている
(京都大学人類学研究会編「目で見る人類学」より)
出典:自然人類学第8回講義資料
よって人間は進化の結果、その狭い産道から、出産に際して「大きなアタマ」を持つ赤ちゃんを無理やり通さないといけなくなった訳なのです。
その結果、赤ん坊は頭蓋骨と股関節がまだ未完成な、極めて未熟な状態で誕生するより他なくなったのですね。
シカやウマなどといった草食獣と比べると、人間の新生児というのは自力で歩くこともままならないほど弱い存在であるのです。
生後一年は、母親は赤ちゃんにつきっきり
そうなると、人間の母親は赤ちゃんが自力で立ち上がって歩けるようになるまでは、常に肌身離さず抱えて育てることになるのですね。
その間、およそ一年。
その1年の間は、母親ですらも、そうそうエサにありつけなくなってしまうことを意味します。
常に赤子を抱えている訳ですから…。
サルは安産
いっぽう、おサルさんたちはというと…。
サルやゴリラ、チンパンジー、オランウータンといった、比較的ヒトに近い動物でも、基本的には4足歩行ゆえに骨盤は縦長で大きいのです。
なので人間ほど難産ではありません。
まあ、もっともアタマの大きさがぜんぜん違いますしね。
また、サルの仲間は、そのほとんどの場合、一夫多妻制。
つまり、力を持ったボスの子供を群れのメスたちが産み育てるのです。
なので多くの場合、群れ全体で育児をするのがひとつの特徴。
人間は難産なので
いっぽう人間はというと、サルよりも難産。
しかも、より未熟な状態で生まれてきます。
いきおい出産後一年間にわたって、人間の母親は、自分のエサもとれない状況が続く訳なのです。
そこで、人間の遠いご先祖様の母親たちがとった戦略が、以下だったのです。
生まれて来た子供の世話を一緒にやってくれ、かつ母子にエサを持って帰ってきてくれるオトコの子孫を選んで生むこと
そうやって選択的に、自分の子供と、産んでくれたオンナの世話をしてくれるオトコの子孫だけが生き残ることになった訳なのです。
そうじゃないオトコの子孫は、自然淘汰されたと考えられるのですね。
みなさん、おわかり頂けたでしょうか?
これこそが「一夫一婦制」そのものなのですよ。
つまりは
我々の遠い祖先のオトコたちは、特定のオンナとある意味「契約関係」を結び、自分の子孫を産んでもらう代わりに他に浮気をすることが許されなくなったのです。
それは、知能を発達させるため「二足歩行」を始めて立ち上がったが故に、骨盤が小さくなって難産になり、超未熟な状態で子供を出産せざるを得なくなったから。
さらには生まれて来た子供が自力で歩行出来るようになるまでは、オトコがオンナと子供の分もエサを持って帰らなければならないため。
その間、少なくとも1年間。
最後に
思い切って、今回の記事を要約しちゃいましょうか。
要するに。
高い知能を獲得した代償として難産になったことが、却って男女の愛を深めることに繋がったということなのです。
そして、それこそが本能の赴くままに行動する動物と、理性に従って行動する人間との決定的な差なのであると。
まさに人間の本質にせまる部分であるかと思うんですよね。
そう考えると、お産の苦しみが少しポジティブに考えられるようになりませんか?
2018.7.26