ナチスドイツ軍の奇妙な兵器の数々【マッドサイエンチストたちの暴走】
熱烈なアンコールにお応えするかたちで、今回も、なんとミリタリーについて。
お題は、「奇妙な兵器」。
第二次世界大戦時において、世界の科学技術の先端をリードしていたドイツ。
そのドイツにあって国家の勝利のためにというよりは、己の知的好奇心を満たすため、いたずらに不要不急な研究開発に邁進してしまったドイツ人科学者たち。
だって、平時では考えられない額の研究費が国家から出るんだもの。
いきおいマッドサイエンティストたちが続出しようもの。
そんな狂気の科学者たちが、世に送り出した「奇妙な兵器」のごく一部を紹介していきましょう。
ブロームウントフォスBV141(左右非対称な航空機)
ドイツ空軍が偵察機として開発していた機体。
写真を一目見て頂ければわかる通り、なんと左右非対称な機体をもつ世にも奇妙な航空機。
偵察員の視界を広く確保することが目的で、このようなデザインになったのだと。
しかし、機体を操縦するにあたって、かなり強いクセがついてまわったはず。
現場の人間たちからは、『ちんば飛行機』と揶揄されていたらしい。
メッサーシュミット Me 163 「コメート」(史上初のロケット戦闘機)
別名『悪魔のたまご』。
史上初のロケットエンジンを動力とする戦闘機。
ちなみにジェット戦闘機とは、まったくの別物です。
『コメート』とはドイツ語で彗星のこと。
ケタ外れのロケット推進力で一気に高高度まで上昇。
最高到達点から、今度は、位置エネルギーを利用して一気に急降下。
マッハ1にせまる速度と強力な30ミリ機関砲を抱え、連合軍戦略爆撃機を上空から迎撃。
当時の連合軍の護衛戦闘機(プロペラ機)では、どうやっても追いつかないくらいのスピードだったんだそう。
しかし、3分しか滞空出来ないという致命的弱点がすぐに発覚。
戦果はあまり挙げられなかったよう。(当たり前です!)
ちなみにロケット燃料がとても危険極まりないものだったそう。
また、その燃料と酸化剤は爆発性と腐食性が極めて強く、搭乗員や整備員は非戦闘時も生命の危険にさらされていた(パイロットが不時着そのものでは無傷だったが、燃料漏れが発生して、強酸さながらの腐食性を持つ推進剤(高濃度過酸化水素とヒドラジン)を浴びて全身に重傷を負った例もある)。
このあたりも、『悪魔のたまご』と云われた所以か。
ハインケルHe111Zツヴィリング(双子航空機)
ハインケル He111Z `ツヴィーリング` (プラモデル) 画像一覧
大型輸送軍用グライダーであるメッサーシュミットMe321ギガントを曳航するために開発された双子爆撃機。
(※グライダーとは、動力装置をもたずに滑空だけする航空機のこと)
動力を増加させる目的で、He111爆撃機を並列に繋ぐという荒技に出たのです。
しかし、すぐ後にMe321ギガントに直接エンジンを付与したMe323が開発されてしまいます。
だって、そりゃそうでしょう(笑)。
実際に、He111に曳航されるMe321ギガント。(下の写真)
こんな状況で敵に見つかったら、ひとたまりもありませんね。
ホルテンHo229(なんとステルス爆撃機)
http://blog.livedoor.jp/drazuli/archives/7505691.html
なんと大戦末期の頃、ドイツ空軍でレーダーに反射しない「ステルス爆撃機」の開発がほぼ完成をみていたという衝撃。
イギリス本土をドイツ軍の空爆から守るため設置されたレーダー施設。
そのレーダー網をかいくぐるため、なんと1944年当時にしてステルスジェット爆撃機の開発がなされていたのです。
ところで。
Ho229って、何か似ていると思いません?
そう。
おそらくは、きっと、そういうことなんでしょう。
Ho229は、かろうじて実用性を見ることが出来るのでしょうが、当時の戦況を考えると、もっと他に優先して作られなければならなかった兵器がたくさんあったはずです。
ミステル(親子飛行機)
http://www.warbirds.jp/data/do/htm/mistel.htm
爆弾を満載した無人爆撃機(子機)を下部に取り付けた単座戦闘機(親機)が、ターゲット近くまで誘導して切り離すというメルヘンな代物。
今でいう、無人誘導ミサイルの先駆けといったところでしょうか?
でも。
これ考えた技術者の脳みそをいちど見てみたいです。
こんなのがフラフラ飛んでいたら、敵戦闘機の格好の獲物になるだけでしょう。
ほとんど、まともな戦果を得られていなかったようです。
最後に
当時、世界でもっとも科学の最先端を走っていたドイツ。
しかし、こんなにも実用性に欠ける兵器を次から次に無秩序に開発していくさまに、驚きを禁じ得ません。
ある意味、科学者の暴走ないし自己満足にすぎない代物かと。
潤沢な国家予算を背景に、ひたすら「無用の長物」の開発に明け暮れたドイツに、そもそもの勝機などなかったのかも知れません。
ひょっとしたら、科学者の知的探究心が暴走した結果、国家の崩壊を早めてしまったとも云えるかもしれません。
2018.6.19