ogikubojinの日記

産前産後のケアでいらっしゃっている患者さんたちとのとりとめもない話

胎盤という臓器はレトロウイルスによってもたらされた!?【進化とウイルスとの関係】

 

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唐突に皆さんにお聞きします。

 

「ウイルス」と聞いて、いったい何を連想しますか?

 

 

 

「妊婦さん!」と答えた、そこのアナタ。

間違いなく天才です。

 

 

そう。

 

今回の話は、妊娠とウイルスとの関係について。

え?本当に大丈夫なのかって?

 

大丈夫。

だって、ボク天才ですもん(笑)!

 

 

お腹の子は何故お母さんの免疫から攻撃を受けないのか

 

たまに職場でクライアントさんから、こんな質問を受けるんですよね。

 

「先生、なんでお腹の子は、血液型すら違うこともあるのに母体から攻撃されないんですか?」

 

まあ確かに、母体からみれば胎児は遺伝子レベルで完全に別個ですから。

言うなれば、母体のなかに発生した完全なる異物。

 

よ〜く考えると、お母さんの抗体に攻撃されないこと自体が不思議ですよね。

 

でも答えは簡単。

 

胎盤という器官が、お母さんの血液中から免疫因子を完全に濾過してくれるからなんですね。

つまりは、胎盤がお母さんと胎児とを分け隔てる「境界線」の役割をしているのです。

 

だから胎児は、お母さんの血液から成長に必要な栄養分だけを都合良くもらうことが出来る訳なのですね。

逆に胎児側から出た老廃物も血液に乗って、母体の方に送られていきます。

 

そもそも胎盤とは

 

ところで、胎盤という存在の意味するものとは何でしょう?

それは、哺乳類であること。

 

つまりは胎盤を獲得したことによって、卵生から胎生に進化を果たせたのです。

 

ある程度、母体のなかで育ててから産み落とす方が、生存戦略上きっと有利だったのでしょうね。

それには、母体と胎児の血液が完全に混じり合わないようにするため「胎盤」が必要だったということなのです。

 

胎盤の多様性から見えてくるものとは

 

これまでは、ブタやウマから、犬ネコ、そしてヒトといった順で、胎盤も進化を果たしてきたと考えられていました。

 

しかし、胎盤形成に関わる遺伝子を調べてみたところ、それぞれの哺乳類でその起源がバラバラであることが判明したのです。

 

つまり、胎盤に関しては、各々の哺乳類がそれぞれ独自の進化を果たした形跡があるのだと。

 

 これまで哺乳類の進化の方向性は胎盤の進化から推測されていました。栄養を運ぶ細胞が胎盤内にどの程度浸潤しているかを手掛かりにブタ、ウマなどからイ ヌ、ネコ、ヒトの方向に進化したと考えられていました。ところが近年、胎盤形成に関わる遺伝子は自然な進化では説明がつかないほどに起源が異なっているこ とが分かってきました。

 

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では、いったい哺乳類の胎盤はそれぞれどのように独自に進化していったのでしょうか?

 

胎盤の獲得になんとウイルスが関与していた

 

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結論から言ってしまうと、なんとウイルスから胎盤の「設計図」を貰っていたことが判明したのですね。

 

それぞれ哺乳類の胎盤のゲノムを調べてみたところ、レトロウイルス由来であることが分かったのです。

つまり、過去に感染したウイルスが宿主に持ち込んだ「遺伝子のかけら」が胎盤の設計図であったのだと。

 

この謎を解明するカギとなるのが内在性ウイルスです。ウイルスが動物に感染するとその遺伝子が宿主のDNAに取り込まれることがあります。このようなウイルスを内在性レトロウイルスといいます。研究グループはウシの胎盤形成時に発現する全ての遺伝子を抽出し、コンピュータで解析することで内在性レトロウイルス由来の遺伝子の特定を行い、各遺伝子の機能を特定しました。その結果を統合すると哺乳類がウイルスの遺伝子から胎盤形成に関わる遺伝子を取り入れてい ることが浮き彫りになってきました。さらに、より優れた機能の遺伝子を持つウイルスに感染した際にはそれを積極的に取り入れている可能性もでてきました。 この発見によってこれまで考えられていた哺乳類の進化の方向性が覆る可能性が出てきたのです。

 

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「より優れた機能の遺伝子を〜」のくだりからすると、各々の哺乳類がより優良な設計図をもつウイルスから、選択的に遺伝子を獲得していたことになります。

これが多様性の秘密だったのですね。

 

 ウイルスとはいったい何者なのか?

 

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ここでウイルスの「定義」についてお話しておきましょう。

ウイルスと細菌の違いって、みなさんご存知ですか?

 

まずは、大きさが桁外れに違うことが挙げられます。

ウイルスより細菌の方が、ぜんぜん巨大です。

 

そして、細菌は「細胞」という生物としての最小単位をもっているのに対して、ウイルスは細胞壁すら持ち合わせていません。

なので、ウイルスは、細菌のように細胞分裂も出来ず、自力で自己複製も出来ない訳なのですね。

その代わり、宿主のDNAの一部を書き換えることによって、宿主に自分の分身を作ってもらうように仕向けるのです。

 

つまり、ウイルスは生き物なのかどうかも分からない「得体の知れないもの」なのです。

 

 

じゃあいったい何故、ウイルスは、この世に存在するのか?

  それは、「生命をアップデートさせるため」なのではと本気で考えざるを得ないのです。

 

 最後に

 

生き物かどうかも定かではないウイルスが 、何故この世に存在しているのか?

 

ちょっと人間側の都合で解釈させてもらうと、僕はこう考えます。

 

 

人間ないし動物がこの先も進化していくための、DNAの断片を運んで来てくれる存在。

つまりは、人間ないし動物がアップデートしていくためだけに存在するモノ。

 

しかし、ときには宿主を大量に殺戮しまうこともあるが、決して絶滅させるところまでは追いつめない。

それは、ウイルスこそが単独では存在することの出来ない弱い立場だからこそ、宿主と共生関係を結ばざるを得ないから。

 

見方によっては残酷かも知れないが、「より強い人類の子孫を選択的に残すために強毒化することがある」とも考えられる。これこそが自然淘汰の先にある進化なのではと。

 

 

簡単な話、人間は風邪を引くことで進化を果たしている可能性があるのではと考えるのです。

 

これを解りやすく説明するのに「胎盤」と「ウイルス」というキーワードを使ったのですが、結果的にかえって解りにくくなってしまったかな?

 

 

 2018.7.17