アリを麻薬漬けにして支配してしまうシジミチョウの仲間【シジミチョウのもつ裏の顔とは】
今回は、ちょっと変わった生態をもつチョウのはなし。
みなさん、「シジミチョウ」ってご存知ですか?
比較的、都会でもよく見かける、わりとありふれたチョウであるかと思います。
ちいさな体でひらひらと可愛らしく飛ぶ姿は、まさに癒し系。
でも、一部のシジミチョウは、そんなイメージを根底から覆す、「まさかの生態」をもっていたんですね。
シジミチョウとアリは「共生関係」にある生き物
実は、シジミチョウの幼虫って、アブラムシなんかと同様に甘い蜜を分泌することでアリに捕食者から守ってもらって生きているんですね。
これだけでも、意外すぎる事実なのではないでしょうか?
でも、シジミチョウの仲間のなかには、もっと凄い「アリとの関係」を構築している種類がいるのです。
なんと、シジミチョウの種類によっては、直接、アリの巣の中にお邪魔してしまうものがいるというのだから驚き。
アリの巣に寄生する一部のシジミチョウ
日本では、ゴマシジミ、オオゴマシジミ、キマダラルリツバメ、クロシジミの4種のシジミチョウがアリの巣に寄生することで知られています。
そのなかで、クロシジミに焦点をあててみましょう。
クロシジミは日本の代表的なアリである、クロオオアリの巣に寄生することで知られています。
クロシジミの生態
他のチョウと同じく、最初はススキなどの植物に産卵して育ちます。
クロシジミの幼虫は、3齢幼虫になるまでは、なんと同じ場所に群がるアブラムシの分泌する蜜を主な栄養源として生きているのです。
そして、3齢幼虫になってからは、今度は自身がアリの喜ぶ蜜を分泌するようになるのです。
実は、その蜜にとんでもない秘密があるのですね。
その蜜には、ただ甘いというだけでなく、アリの行動を支配してしまう「麻薬物資のようなもの」が含まれているというのです。
この「甘い蜜」によって、次第にアリの行動パターンも変わってゆき、終いには自分たちの巣へとクロシジミのの幼虫を連れていってしまうのですね。
つまりは、クロオオアリを麻薬漬けにしてしまうのです。
アリの巣の中での生活
うまくクロオオアリを騙して、巣へと運んでもらったクロシジミの幼虫。
では、アリの巣のなかで、いったい何を食べて育つのでしょう?
今度は、アリから口移しでエサをもらったり、時にはなんと、アリの幼虫を捕食して育つとうのだから驚きです。
でも、いったい何故、クロオオアリはクロシジミの幼虫を襲わないのでしょうか?
それは、アリの習性を逆手に取っているから。
アリは、敵か味方かどうかを臭いで嗅ぎ分けて判断しています。
集団生活するアリには、コロニー(巣)ごとに固有の臭いがあって、異なる臭いのアリどうしが接触すると、ケンカを始めます。
それは、たとえクロオオアリどうしでも同じ。
つまり、家族で同じ臭いをまとっているのですね。
おそらくは、そんなアリの習性を利用して、臭いでアリを「身内」だと思わせてしまっているのでしょう。
これを「化学的擬態」と言うようです。
いわゆる一般的な「擬態」については、こちらの記事をどうぞ。
最後に
野原でひらひらと舞うシジミチョウ。
どこか牧歌的なイメージすらある、やさしいイメージのチョウ。
しかし一部とはいえ、シジミチョウにこんな「どす黒い裏の顔」があったなんて驚きですね。
いやはや進化というものは、実に恐ろしいものです。
なお今回、記事執筆にあたって参考にさせていただいた文献も載せさせていただきます。
ご興味を持った方は、ぜひお読みになってみてはいかがでしょうか?
2018.8.11