抗生物質を簡単には処方してくれない伝説の小児科クリニック
治療院のある荻窪から、バスでほんの5〜10分ほど行ったところに高井戸という街があります。
患者さんから聞いた噂なのですが、その高井戸にどうやら伝説の小児科クリニックがあるのだとか。
なんでも薬をなかなか処方してくれなくて有名なクリニックなのだそう。
その患者さん、先生にこう言われたのだそう。
「風邪だと思われますので、充分にあたためて、水分を充分に摂り、しっかりと睡眠をとってください」
そして、そのまま手ぶらで帰されたのだそうな。
抗生物質は処方箋がないと買えない
さんざん待ち合い室で待たされた挙げ句、先ほどのセリフだけで手ぶらで帰されたら、皆さん、どう思いますか?
なかには会社を休んでまで、お子さんをお連れになったなんて方もいらっしゃることでしょう。
「せっかく貴重な時間を割いて来たのに処方箋も出してくれないなんて!」
こう思っても、ぜんぜん不思議ではありませんよね。
でも、ご存知でしたか?
風邪は、抗生物質では治せないという事実を。
医者はなぜ抗生物質を処方するのか?
日本には今だに根強く「抗生物質神話」なるものが信じられています。
これさえ飲んでしまえば、即座に風邪が治ってしまうものと…。
でも実際には、ほとんどの風邪の原因であるウイルスには、抗生物質はまったく効かないんですよね。
効果があるのは、細菌についてのみ。
(※一部、特定ウイルスに有効な、抗ウイルス薬の存在もあり)
抗生物質を処方する本当の目的は、ウイルス感染(風邪)によって引き起こされる、細菌による二次感染を防ぐためであるのです。
肺炎球菌などが代表的な二次感染例ですね。
風邪により体力を落としたところでの細菌感染を予防するため抗生物質だったんですね。
よかったら以下のブログで詳しく…。
日本は先進国のなかでも抗生物質を処方しすぎる国
欧米はじめ先進国では、ほとんどの抗生物質が効かない「耐性菌」出現への対策として、安易な抗生物質の処方に制限をかける動きが一般的となっています。
そんな動きと逆行する形で、日本では相変わらず必要のない抗生物質まで処方されることが多いのが現実です。
きっとジェネリックの存在もあり、薬価が安いこともあるのでしょう。
それと患者側が処方しないと納得しないことも背景にあるのかも。
抗生物質には弊害もある
どんな薬にも必ず、副作用がつきもの。
もちろん抗生物質も、その例に漏れません。
特定の細菌だけを狙って殺すなんて出来ない訳ですから、体内にいる本来有用な善玉菌まで一緒に殺してしまうことにもなりかねないのです。
とくに腸内細菌へのダメージは甚大になるでしょう。
僕は、これがアレルギー体質の方が急増した原因のひとつではと捉えています。
本来、ウイルスを撃退する能力が人間には備わっているもの
風邪による諸症状について。
- 高熱を出すのは、ウイルスの活動を鈍らせるため。
- 咳をするのはウイルスの気管支から肺への侵入を防ぐため。
だから、解熱剤や咳止めの服用はかえって治りを悪くすることにも繋がりかねないのです。
とくに幼児期においては、きちんと自分の免疫でもってウイルスをやっつける訓練も必要かと。
本当の意味で良い医者とは
結局、あらゆる薬に副作用が存在する以上、なるべく必要最小限の薬しか処方しないようにすることが重要となってきます。
しかし、医師もボランティアではありません。
現行の医療制度だと、どうしても多くの薬を処方したほうが診療報酬において有利となってしまいます。
クリニックも利益を出せなければ潰れてしまう訳ですから。
そして、処方箋がないと納得しない患者側の問題も然り。
それを踏まえても、敢えて余計な薬を処方しない方針の医師たちに僕は、「医師としての矜持」を見るのです。
そう。
そういった意味で「伝説のクリニック」であるのです。
そんな素晴らしいクリニックが近所にあるなんて、本来とても幸運なことなんですよ。
当院の患者さんたちには、そう伝えるようにしています。
しかし。
その後、聞いた話では、そのクリニック、さすがに経営が傾いてしまったそう。
そして、今では盛り沢山のお薬を出すクリニックとして生まれ変わったんだとか。
生きるって、やっぱり妥協することなんですかね?
誰か教えてくださ〜い!
2018.5.30