僕なりの良い医者の見分け方とは【小児科医編】
みなさん、良い医者の見分け方って、ご存知ですか?
最近、ちょっと個人的に気になった件があったので書き留めておこうかと。
東京は、杉並区高井戸方面からいらっしゃっている患者さんたち数人から同じようなウワサをお聞きしたんです。
なんでも、とある小児科クリニックでは、ぜんぜん薬を処方してくれないんだとか。
貴重な時間を割いて、さんざん待ち合いで待たされたあげく…、
「ただの風邪だと思われますので、充分に温まって、水分を充分にとり、しっかりと睡眠をとってくださいね」
と話すだけで、風邪をひいてしまったお子さんに一切の薬を処方してくれないんだそう。
「そんなの言われなくても分かってるわよ!」
これが偽らざる本音ではないでしょうか。
皆さんは、どう思います?
僕は良い医者であると思いましたので、みなさんにそうお伝えしましたよ。
じゃあ。
果たして、ただちに薬を処方してくれる医者が本当に「良い医者」なのでしょうか?
まあ、その人の考え方次第なのでしょうけど。
そういう意味では、答えはひとつだけではないのかも知れませんが…。
僕の考える「良い医者」とは、常に患者さんの利益を第一に考えてくれる医者のことです。
ざっと、まとめるとこんな感じ。
①極力余計な薬を処方しない
→どんな薬にも必ず副作用があります。それは漢方薬だって同じ。
②営利主義に走らない
→不必要な検査、とくに安易にレントゲンをはじめ、高額医療機器を使わない。
③的確な診断が出来る(誤診が少ない)
→これは当たり前。
④親身になって話を聞いてくれる
→実はこれが重要。患者さんからの些細な情報から重大な疾患が判明することもある。
しかし、これら条件を満たそうとすればするほど、診療報酬が下がっていってしまうのが現実なのです。
ところで、話は変わるのですが。
医者が処方する「抗生物質」って、風邪を治すための薬だと本当に思っている方って多いんでは?
実は、抗生物質では風邪のおもな原因であるウイルスは殺せないんですよね。
細菌には有効なんですけど…。
よって、細胞壁すら持たないウイルスにはまったく効果がないのです。
※細菌には細胞壁があり、生物としての体をなしているがウィルスは生物ですらない。
じゃあ、なんで医者は抗生物質を処方するのでしょう。
抗生物質の本当の目的は、風邪をこじらせて抵抗力を落としたところに、細菌による二次感染を予防すること。
肺炎球菌が引き起こす肺炎なんかが代表的な二次感染例ですね。
だから本当は、高熱でもでていない限りは、むやみやたらに抗生物質は服用しない方が良いんですよ。
結局、風邪を治す(ウィルスを撃退する)には、自分の免疫がやっつけてくれるのを待つしかないんですね。
※タミフルとかリレンザといった抗ウィルス薬も、少数ながら一部存在します。
ただ、あまりに高熱や咳き込みが酷い場合は、幼児の場合、体力が急激に低下して重症化してしまうこともあるので、そこは注意。
その場合に限っては、うまく解熱剤や咳止め、抗生物質を服用するべきなのです。
ただ、やみくもに解熱剤や咳止めを服用させてしまうと、かえって治りが遅くなってしまうことがあるのです。
僕だったら、幼児のうちにしっかりと細菌やウイルスを自力で撃退する抵抗力を育むべきだと思いますけどね。
でも、安易に抗生物質をもらおうとする患者さん側にも、問題がありそうです。
抗生物質って処方箋がないと入手できないですから。
つまりは、医者にかからないと手に入らない。
だから、患者側としては、「せっかく医者にかかったんだから」という心理がきっと働くのでしょう。
これ、いわゆる「抗生物質神話」。
ちょっと話が延びてしまったのですが…。
その後、高井戸にあるウワサの小児科クリニックの近況についてですが。
今では、逆にジャンジャン薬を処方する方針に変わってしまったのだとか。
きっと、理想だけでは飯は食えないということに気付いたんでしょうか?
医師としての矜持も、きっと財力次第なのでしょうか。
2018.3.21