ogikubojinの日記

産前産後のケアでいらっしゃっている患者さんたちとのとりとめもない話

カルト的人気を博した伝説の番組『フランケンシュタインの誘惑』【マッドサイエンティストについての考察】

 

f:id:ogikubojin:20180430195341j:plain

https://news.mynavi.jp/article/20171228-564124/

 

まさに「上質のドキュメンタリー番組」以外に相応しい言葉が見当たりません。

 

 

フランケンシュタインの誘惑』

 

NHKBSプレミアムで惜しまれつつも、この春、最終回を迎えてしまったドキュメンタリー番組。

 

世界中のマッドサイエンティストと呼ばれた科学者たちに焦点をあて、その狂気に満ちた半生を辿っていくサイエンス番組。

 

歴史に名を残した偉大な科学者たちが持つ、実はあまり知られていない「もう一つの顔」をNHKが総力を挙げて取材していくのです。

 

 

そして、司会進行をなんと、あの吉川晃司さんが担当されたことでも話題になりました。

 

 

愛と憎しみの錬金術・毒ガス

 

番組のコンセプトや概要についてウンチクを語る前に、いきなり実際の番組内容について語っちゃいます。

その方が、絶対わかりやすいから。

 

でも困った。

内容がとても高度すぎて、キレイに文章としてまとめ上げられるか自信がない。

 

…と思ったら、偉大な先人のブログを発見。

 

特にこの回は、素晴らしかった。

 

 

f:id:ogikubojin:20180616081617j:plain

 

『愛と憎しみの錬金術・毒ガス』

 

 

もちろん他の回も秀逸な内容ばかりなのですが、一般の方がいちばん理解していただきやすい内容かと思ったのでピックアップ。

 

ドイツ人科学者、フリッツ・ハーパー氏の残した功罪について。

 

フリッツ・ハーバー - Wikipedia

 

先に要点をかいつまんで話すと、

世界の食糧事情を一変させ、人類を飢餓から救う大発見となる技術を確立し、ノーベル賞を受賞した科学者と、世界で初めて大量殺戮のための毒ガス兵器を開発した科学者が実は同一人物であったという事実。

 

以下、内容については引用させて頂きます。

 

perry-r.hatenablog.com

 

 第一次世界大戦中の1915年4月。ベルギー・イーペルにおいて、ドイツは史上初の毒ガス兵器を投入した。ガスを開発したのが当時の大物化学者フリッツ・ハーバーだった。

 

 ユダヤ系ドイツ人だったハーバーは、1907年、世界で初めて空気から窒素を(アンモニアの形で)取り出すことに成功した。この技術は、開発者ハーバーと工業化に尽力したボッシュの名前を取り「ハーバー・ボッシュ法」と呼ばれる。100年後の現在でも使用される技術である。

 

 しかし1914年、第一次大戦が始まると、ハーバーは自分の力を戦争に役立てようと軍に協力、化学部門の最高責任者となり、まず塩素ガスを毒ガスとして戦場に投入した。ハーバーの妻でかつて化学者だったクララはそれを非難し、イーペルの戦いの後、恐らく抗議のため、銃で自殺した。ハーバーはそれにもめげず毒ガス開発を進め、ガスマスクでも防げない凶悪なガス・マスタードガスを開発した。パーバーは親友だったアインシュタインから非難されるが、毒ガス開発を止めることはなかった。

 

世界を飢餓から救った科学者が、なんと大量殺りく兵器の開発分野においても第一人者だったという事実。

 

 

いったい何故?

 

それについては、科学哲学者であり、科学史でもある物理学者の池内了(さとる)氏が番組内で毎回、解説して下さいます。

 

科学者たるもの、時として目の前の研究に没頭するあまり、しばしば倫理がないがしろになってしまうことがあるそうなのです。

 

たとえそれが道徳に反するものだとしても、科学者としての本能である探求心が盲目にさせてしまう。

それが言うならば、マッドサイエンティストの本質の部分なのではないでしょうか?

 

 

フランケンシュタインの誘惑』という番組について

 

さあ、ここで改めてこの番組の概要について説明しますよ(笑)。

 

www4.nhk.or.jp

 

 

 まず、この番組を観て、いちばん最初に思ったのが時代考証なども含めた、その取材力。

なんせ科学に焦点を当てた番組ゆえに、専門家の指導のもと慎重に取材を進めていくことが必要になろうもの。

 

そりゃあ毎月一回の放送が限界となりますよね(笑)。

逆によく、あれだけの内容の番組を毎月放送していたものかと。

 

世界中の各分野の専門家に取材を重ねて、事実について丁寧に検証を重ねていきます。

吉川晃司さんをキャスティングすることだけでなく、取材にかかる費用のことを考えたら、ちょっと民放では予算的に出来ないクオリティかと思うのです。

 

さらには、よくネタが尽きないものかと。

…でも、さすがに最終回を迎えてしまったところからすると、もはやネタ切れだった?

 

 

毎回、素晴らしい番組内容をもって魅了してくれる

 

 他にも、衝撃の事実が視聴者を驚かせてくれました。

 

  • NASAの研究開発室のトップが、実は元ナチス親衛隊の幹部だった
  • エニグマ暗号機を解読した人物は、実はAI開発の父でもあった
  • 作家・森鴎外こと科学者・森林太郎の裏の姿、ビタミンと脚気について

などなど。

 

1時間番組なのですが、正直、見終わるとけっこう疲れます(笑)。

 

でも、確実に充実感に満たされます。

こんなにも知的欲求を満たしてくれるコンテンツは、他になかなかお目にかかれません。

しかも、それがテレビ番組だというのですから。

 

 それと、もし、この番組にさらなるご興味を持たれたのであれば、先ほど引用させていただいたカール大公さんが、ブログで各回放送をまとめられているようですね。

 

 

perry-r.hatenablog.com

 

 いやはや、自分にもっと文才があったらと、ついつい嘆きたくなります。

 

 

最後に

 

とにかく、どうにかして、この秀逸なカルト番組を世に知らしめたかったんですね。

ただ、いざ構想を練ってみると、内容が内容だけに記事にすることが、いかにハードルの高い作業となろうことか…。

 

…と、悩んでいたところ、素晴らしい先人のブログに行き当たりまして…。

だったら、相乗りさせて頂こうかと。

 

この番組で学んだことは、

時に科学者を狂気へと暴走させてしまうのは、それが科学者の本質ゆえであるということ。

 

つまりは、研究対象への探求心が、ことの善悪よりも優先されてしまうのが科学者としての性(さが)であると。

 

なんと奥深い。

 

それと、余談ですが番組内容をまとめた書籍が発刊されているそうですね。

よかったら。

 

 

 

 いつか必ずNHKで再放送されるはず。

いや、金払ってでもNHKオンデマンドで見る価値が絶対にあります。

 

こんなにも素晴らしいドキュメンタリー番組が世に埋もれたままだなんて。

それが、ただただ耐えられなかったのです。

 

それと最後に番組レビューを引用させていただいたカール大公さんには、重ねて感謝申し上げます。

 

 

2018.6.17