赤ちゃんたち3人に芽生えた連帯感【赤ちゃんたちの社会性についての考察】
今から10年ちょっと前の話です。
当時はまだ、カイロプラクティックの世界に入って間もない「新人さん」だった自分。
当然、担当させていただく患者さんも、そうはまだいません。
だから時間が空いていたので、よく託児所で患者さんの赤ちゃんのお世話をさせていただいてたんですね。
その頃はまだ、整体院専用の託児所というシステムを稼働し始めたばかり。
まだこの業界では託児所付きの整体院は珍しく、試行錯誤を繰り返しながら、どうにか運用ノウハウを構築していっている段階でした。
しかし、潜在的な需要はかなり大きかったようで、託児所がパンク寸前になるまでは、そう時間はかかりませんでした。
需要に供給が追いつかず、どうしてもベビーシッターさんが不足がちに…。
それで、よく託児所に動員されたんですね(笑)。
そんな、ある日。
その日に勤務予定だったベビーシッターさんが立て続けに2人とも、なんと病欠に。
まさかの展開なのですが、自分が終日、託児所で子守りを担当することになったのです。
…そして、あの瞬間がやって来たのです。
なんと、0歳児ふたりと1歳児ひとり、都合3人の赤ちゃんを自分一人で1時間預かることになったのです。
しかも、その1歳児というのは、よく泣き、手が掛かることで有名。
さあ、困った。
でも、やるしかありません。
1人でも泣き始めたら、連鎖反応が起こること間違いなし。
そうしたら、もう僕も泣くしかありません。
でも、せっかくいらした患者さんたちには、心から安心して施術を堪能してもらいたい。
そのためには、ベビーたちを1人たりとも泣かす訳にはいかない…。
いろいろなことが頭をグルグルと回ります。
そうこうしているうちに、赤ちゃんたち3人が勢揃い。
しかし、ベビーたちの目に映ったのは、いつもの優しいベビーシッターさんでなく、なんだかエプロン着てる「ごっついおじさん」。
やはり、いつもとは違う空気を敏感に感じ取っている様子。
そこで、奇跡が起こったのです。
なんと普段、泣き虫でしょうがない、1歳児の年長赤ちゃんが空気を察したのか、お母さんと離れても珍しく泣かないのです。
それは、あたかも自分が泣いてしまったら後輩ベビーたちもつられて泣いてしまい、この場が崩壊してしまうことを悟ったかのように…。
そして、ふたりの後輩ベビーたちも、年長赤ちゃんの我慢ぶりをチラチラと見ながら、何かを察し始めたのです。
そう。
きっと、社会性というヤツが芽生えた瞬間なのです。
そして、当時30歳の自分と、1歳児と、ふたりの0歳児の4人の男子のあいだに不思議な連帯感が生まれたのであります。
たぶん、その日一瞬だけ、男4人である意味「家族」になれたのですね。
結局、誰一人として泣くことなく、1時間を過ごせたのです。
非常にデンジャラスな時間帯をクリアすることが出来たのです。
何なのでしょうか。
偶然、全員男だったから故に、結束が高まったのでしょうか?
今でも、あの瞬間をたまに思い出すことがあるのです。
2018.4.7