優しい祖父に少女が肩揉みの駄賃として渡していた百円の意味…
こちらも、 もう10年も前の話です。
中野にあった治療院で働いていたときのエピソード。
どちらかというと「症状ありき」というよりも、「妊活」の一環として通われていたと記憶しています。
もともと「夜の世界」で働かれていたという女性。
結婚されたものの、なかなかお子さんを授からず悩まれていた様子でした。
もちろん、来院の動機は、肩こり腰痛といった一般的な症状を書かれていましたけど。
とても印象的な女性でした。
なかなか眼にチカラを感じる女性で、さすが「くぐり抜けてきた修羅場の数が違うな」といった感じでしたね。
「夜の世界」では、同僚はみんなライバル。
そういった競争を生き残ってきた逞しさが、いわばオーラをまとわせていたのでしょう。
余談ですが、かつて仕事で知り合った元プロ野球選手もいたなんていう武勇伝もお聞きした記憶もあります。
そんな彼女も、やはり普通の人間であることに変わりはなく、慢性的な肩こりに悩まれていた部分にはかろうじて親近感を覚えたものです(笑)。
人生における経験値を高めることによって、精神的強さを増していったであろう彼女も、おそらくその人間的本質は、「神経質である」ということ。
施術で彼女と対峙するうちに、そんな「精神的たくましさ」とむしろ矛盾する「神経質さ」という相反する二面性が同居することに気付きました。
通われていくうちに、やがて彼女の幼少期の話なんかもお聞きすることに…。
やはり、小学校低学年ですでに肩こりに悩まされていたのだと。
人間の性格(本質)というものは、そう変わるものではないのですね。
そして、驚いたことにまだ幼かった彼女は、同居していた祖父に百円を渡して肩を揉んでもらっていたのだと…(驚)。
小さい時分から、男性に接するスキルを磨いたんですね、きっと。
そんな話を嬉しそうにされていたのがとても印象に残っています。
でも、この話をお聞きして真っ先に思ったのが、むしろ癒されていたのはきっと祖父の方だったのではないかということ。
おそらく「百円」は、彼女の祖父にとっては、ただの体裁に過ぎなかったはず。
きっと集めたお金は何らかの形で、ふたたび彼女の元に還ってきたのではないでしょうか。
祖父にとっては、可愛くて仕方ない孫娘とスキンシップを図れることが何よりも嬉しいことだったのかと…。
彼女は、無邪気に笑いながら「百円」のことを話されていましたが、自分は何だか胸がジーンとなったことを覚えています。
優しい祖父の愛情によって育まれた彼女は、きっと最高の幸せ者だったに違いありません。
2018.1.25